GNSS測量の本格的な導入による地籍測量の効率化

地籍調査では、土地の境界を示す筆界点の位置を測定するため、測量作業を実施します。この測量作業の工程を地籍測量と呼び、距離と角度を測定する測量機(トータルステーション)を用いて実施されてきました。
近年、GPS等の測位衛星を用いた測量技術(GNSS測量)が普及し、さらに測量機器等が高度化したことで、より簡便に高精度な測量を実施することが可能となりました。この背景を踏まえ、国土交通省では、より効率的な地籍測量を実現するため、GNSS測量を本格的な導入に向けた以下の取り組みを実施しています。

GNSS測量

【取組1】電子基準点のみを与点とする地籍図根三角測量の導入(平成27年4月)

電子基準点
電子基準点

地籍測量では、「地籍図根三角測量」、「地籍図根多角測量」、「細部図根測量」、「一筆地測量」と呼ばれる4つの測量工程を経て、土地の境界を示す筆界点の位置を測定します。これらの測量工程では、国土地理院が設置した国家三角点や地籍測量の各工程で設置された地籍図根点あるいは細部図根点を基準として測量作業を実施しますが、平成27年4月より「電子基準点のみを与点とする地籍図根三角測量」を導入し、より効率的な測量が可能となりました。
電子基準点とは、国土地理院が全国約1,300箇所に設置した国家基準点の一つであり、金属ピラー内にアンテナや受信機を搭載したGNSS連続観測点です。電子基準点は、常時GPS衛星等からの電波を受信しており、受信データをネットワーク経由で国土地理院に送信しています。これらのデータはウェブサイト等で一般に公開され、測量作業で使用することが可能です。
通常の測量では、既に位置が分かっている基準点(与点)と新たに位置を求めたい点(新点)に測量機器(GNSSアンテナや受信機等)を設置し、観測作業を実施することで新点の位置を求めますが、与点に電子基準点を用いることで、与点上での機器設置や観測作業を省略することができるようになりました。

※電子基準点のみを与点とする地籍図根三角測量の詳細については、「電子基準点のみを与点とする地籍図根三角測量(解説)準則改定版(平成28年4月25日版国土交通省土地・建設産業局地籍整備課)」PDFアイコン[1,072KB] をご参照ください。

【取組2】GNSS測量による単点観測法を用いた一筆地測量の普及啓発(平成27年4月)

単点観測法

地籍測量では、「地籍図根三角測量」、「地籍図根多角測量」、「細部図根測量」、「一筆地測量」と呼ばれる4つの測量工程を経て、土地の境界を示す筆界点の位置を測定しますが、近年、GNSS測量を用いた単点観測法(ネットワーク型RTK法)が普及したことで、「地籍図根三角測量」、「地籍図根多角測量」、「細部図根測量」を実施することなく、筆界点を測量することが可能となりました。
通常、地籍測量では上記4つの測量工程を実施し、多数の基準点を設置することで筆界点の位置を測定しますが、単点観測法では、基準点を設置することなく、筆界点上で10秒程度の観測を実施することで、位置を測定することが可能です。
これにより、作業効率の向上、工程管理等の業務軽減、測量経費の削減等が可能となり、より効率的な地籍測量が可能となります。

※GNSS測量を用いた単点観測法の詳細については、「ネットワーク型RTK法による単点観測法マニュアル(Ver2.1)(平成28年6月 国土交通省土地・建設産業局地籍整備課)」PDFアイコン[9,262KB] をご参照ください。

【取組3】地籍調査作業規程準則運用基準の一部改正(平成29年2月)

近年、GPS等の測位衛星を活用した測量(以下「GNSS測量」という。)が普及しているほか、距離や角度を計測する測量機器等の性能が向上し、より高精度な測量の実施が可能となっている。こうした情勢を踏まえ、地籍整備事業に係る測量作業においてもGNSS測量や高性能な測量機器を用いた効率的かつ高精度な測量を可能とし、より一層の効率化に資するため、地籍調査作業規程準則運用基準等の内容を見直し、平成29年2月に一部改正を行い同年4月に施行しました。主な改正内容は以下の通りです。

  • 省令(地籍調査作業規程準則)に定めのない方法により地籍調査を実施する場合の承認申請資料として、地籍整備課が定めるマニュアルを使用できること
  • 地籍図根多角測量を省略した場合の1次の細部多角点については、標高値を求めること
  • 地籍図根三角測量から短縮スタティックに関する項目を削除

改正した地籍調査作業規程準則運用基準等及びマニュアルは、以下のURLからダウンロードできます。