地籍調査が進まない要因

地籍調査は昭和26年から実施されており、すでに半世紀以上が経過しているものの、思うように進んでいないのが現状です。地籍調査が進まない要因としては以下のような点があげられます。

地籍調査が進まない一般的な要因

地籍調査は、境界の確認などに時間と手間がかかる

地籍調査の中で確認している土地の境界は、土地資産の基礎となる重要な情報であり、土地所有者など関係者の方々が双方の合意の上で土地の境界を確認することが必要です。このために、調査には多くの時間と手間が必要になるという問題があります。

地籍調査の対象地域が、より困難な地域へと移行してきている

地籍調査は、より調査の実施が困難な都市中心部等へと対象地域の重点化を図っています。このため、地籍調査の実施面積が増加しない状況です。

地籍調査への誤解

普通の個人の場合、生涯に土地取引等を行う回数は非常に限られています。また、地籍調査を実施していない地域であっても、実態として土地取引等は行われているという現状もあり、地籍調査の必要性や効果が住民の方々に十分理解されていません。このため、地籍調査実施に向けた機運が高まらない場合が多く、調査がスムーズに進まない要因となっています。

地方公共団体の予算や体制の確保が困難に

地方公共団体では、昨今の財政状況の悪化や行政ニーズの多様化等により、地籍調査の実施に必要な予算や職員の確保が難しくなってきています。

特に都市部で地籍調査が進まない理由

調査に費用や時間がより多く必要

都市部では他の地域と比べ、一筆ごとの土地が細かく分割されており、小さな土地が数多く存在しています。また、土地に関する権利関係が複雑な場合が多く、境界の確認に困難を伴う場合が多くみられます。さらに都市部では土地の売買等に伴った所有権等の異動も多く、この結果都市部は他の地域に比べ、調査の実施には多くの費用と期間が必要になっています。

土地の資産価値が高く境界確認に時間を要する

都市部では土地の資産価値が高いこともあり、土地の所有者等の権利意識が強く、境界の確認に非常に多くの時間を要しています。

住民の立会等の調査への協力が得られない場合が多い

都市部の住民には、トラブルにつながらないよう隣人との接触をできるだけ避けたいとの意識が強くみられます。このため特に民有地間の境界に関する調査について、現地での立会い等の調査への協力を得られない場合が多く見られます。

特に山村部で地籍調査が進まない理由

登記所の図面の精度が悪い

山村部においては、登記所に備え付けられている図面が、そもそも精度上問題のあるような昔の図面を基にしている場合が多く、現状と大きく異なっているなど、地籍調査を実施する場合の基礎資料として使用することが難しい場合が多くあります。

調査の優先度が高くならない

山村部は、他の地域と比べれば土地取引等が少ないにも関わらず、地籍調査を実施するためには一定の費用と手間がかかることから、山村部を優先的に調査を実施しようという市町村内の気運が高まりづらい状況です。

調査が困難な地域が存在

山村部には、急傾斜地など危険な箇所や、山奥で容易にはたどり着けない箇所などもあり、測量や調査を実施することが困難な地域が存在します。

土地所有者等の高齢化等の進行

山村部では、土地所有者等の高齢化や不在村化が他の地域と比べて著しく進行しており、またこれに合わせて山林の荒廃も進んでいることから、土地の境界の確認に必要な人証や物証が失われつつあります。このため、地籍調査を円滑に実施することが困難になってきています。