被災地域境界基本調査

背 景

 地籍調査の実施により明確化された位置情報は、被災地域における復旧工事等での用地調整に活用され、被災後の迅速な復旧・復興に大きく貢献するものです。しかしながら、大規模な地震等により複雑な地殻変動が発生し、地籍調査成果(地籍図や測量成果等)の位置情報が現況に適合しなくなった地域においては、復旧工事等に先行して、早急に地籍調査成果の位置情報を修正することが求められます。

 しかし、市町村等が被災地域において再度地籍調査(再調査)を実施するには、多大な時間と労力、さらには経費を必要とするので、被災後の復旧・復興事業を実施する前に再調査を完了することは困難です。

 平成28年4月に発生した熊本地震においても、熊本県を中心とした広い範囲で顕著な地殻変動が検出され、特に震源付近の約560㎢においては、再調査の実施が必要な状況でした。このため、国土交通省では、被災地域の市町村等による地籍調査成果の早期復旧を支援するため、新たに被災地域境界基本調査を国土調査法の基本調査として創設しました(平成28年9月)。

被災地域境界基本調査(概要)

 被災地域境界基本調査では、地震による地殻変動を把握するための測量作業を実施するとともに、地殻変動によるズレを計算で補正するための局所変動補正パラメータを作成します。また、作成した局所変動補正パラメータを用いて主要な土地境界情報を補正し、調査成果を地図と簿冊にとりまとめます。

① 測量作業(工程名:被災地域境界基本三角測量)

  • 地殻変動が発生した地域に設置されている地籍図根点や公共基準点の、現況調査を実施し、再測量の対象点(被災地域境界基本三角点)を選点。
  • 選点した被災地域境界基本三角点において、測量を実施し、地震後の正確な座標値と地殻変動によるズレを算出。
  • 再測量結果については、公共測量成果として国土地理院の審査を受けた上で、都道府県及び市町村に成果を提供(提供後の成果管理は、各市町村等で実施)

② 局所変動補正パラメータの作成(工程名:被災地域境界基本細部点計算)

  • 測量作業で算出した地殻変動によるズレを基に、250m間隔の格子点上に設定した点(被災地域境界基本細部点)での地殻変動によるズレを補間計算で算出。
  • 被災地域境界基本細部点での計算結果をとりまとめ、局所変動補正パラメータを作成。

③ 地図と簿冊の作成

  • 対象地域で過去に実施された地籍調査成果(地籍フォーマット2000等)から主要な土地境界(被災地域境界基本調査点)の座標値を抽出し、局所変動補正パラメータを用いた座標補正計算を実施。
  • 測量作業や補正計算で得られる地震後の位置座標や地震による変動量を地図や簿冊にとりまとめ。

上記の作業によって得られた局所変動補正パラメータや測量作業の結果、さらには地図や簿冊を被災地域の市町村や関係機関に提供することで、被災後の復旧・復興事業の円滑な実施が可能となります。

局所変動補正パラメータ及び再測量した基準点について

被災地域境界基本調査で作成した局所変動補正パラメータ及び再測量を実施した基準点の情報については以下のURLで公開しています。

被災地域境界基本調査作業規程準則等

被災地域境界基本調査の作業内容を定めた準則や運用基準等は、以下のURLからダウンロードできます。