平成28年(2016)熊本地震に伴う地籍調査の対応について
平成28年4月に発生した熊本地震に伴い、熊本県を中心とする広い範囲で顕著な地殻変動が観測されたことを受け、国土地理院により平成28年4月16日付けで地震発生地域及びその周辺地域の基本基準点成果について公表が停止されていましたが、9月12日付けで改定後の測量成果及び地殻変動の影響を補正するためのパラメータが公表されました。
これにより、基本基準点を基礎として測量を実施する地籍調査にも大きな影響が生じることから、基本基準点の改定成果が公表された地域における地籍調査については、以下のような取り扱いとすることとしましたので、各地方公共団体等の地籍担当部局においてはご留意願います。
対象となる地域
熊本地震による地殻変動の影響により、以下の地域においては基本基準点の成果が改定されているため、地震発生時に実施中又は実施済であった地籍調査成果については、座標補正や再調査が必要となります。
都道府県名 | 対象市町村 |
---|---|
福岡県 | 久留米市、八女市、うきは市、広川町 |
長崎県 | 島原市、雲仙市、南島原市 |
熊本県 | 天草市、苓北町を除く全ての市町村 |
宮崎県 | 椎葉村 |
国土地理院による基本基準点の成果改定については、下記の国土地理院ウェブページをご参照ください。
http://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/H28-kumamoto-earthquake-seika.html
対象地域における地籍調査の対応について
地震が発生した時点における地籍調査の実施状況としては、以下の5つの状況が想定されますので、それぞれの状況により対応が異なります。
① 地震発生後、新たにC工程から作業を実施する地域
C、D工程の選点・設置・観測にあたっては、9月12日付けで国土地理院から公表された改定後の基本基準点の成果値を使用する必要があります。地震発生前に地籍調査が終了した地区に隣接する地域において、地震前に設置された地籍図根点等の利用を検討する場合には、その成果値について、国土地理院が公表している座標・標高補正パラメータ又は国土交通省土地・建設産業局が公表する局所変動補正パラメータ(以下「補正パラメータ」という。)を使用して成果値の補正を行った上で、与点として使用することとなります。この場合、補正パラメータの状況によっては、成果不整合を生じる可能性があることから、測量の実施にあたっては十分に注意する必要があります。成果不整合が生じた場合は、国土地理院によって成果が改定された基本基準点等を追加して網を再構成するなどして測量を行い、補正パラメータにより成果値を補正した地籍図根点等は新点扱いとして成果を算出(改測)することとします。
なお、熊本地震に伴う局所変動補正パラメータの使用については、「熊本地震に伴う被災地域境界基本調査の成果」のページをご参照ください。
② 地震発生以前からC工程以降の作業を実施しており、全工程の作業が終了していない地域(各工程において認証者検査が終了している地域)
この場合、以下のような状況が想定されます。
1)C工程まで終了
2)C工程及びD工程まで終了
3)C工程、D工程及びFⅠ工程まで終了
4)C工程、D工程、FⅠ工程、E工程及びFⅡ工程まで終了
上記の1)~4)のいずれの状況の場合であっても、地震発生以前に実施した測量の成果については、地震による地殻変動等により現時点において必ずしも与点として使用できるものではないことから、補正パラメータを使用して成果値の補正を行う必要があります。補正を実施した場合は、補正結果が実施地区の地殻変動等に適合したものであるかどうかの検証測量を実施するとともに、これにかかる工程管理及び検査を実施することとします。
なお、検証測量等の方法については、「地震による地殻変動後の座標補正実施要領」をご参照ください。
③ 地震発生前にG工程及びH工程まで終了している地域(都道府県による認証前の地域)
地震に伴う地殻変動等の影響により、地震前の地籍調査による座標値等では、認証を行うことができないことから、補正パラメータを使用して地籍図根点、細部図根点及び筆界点等の補正計算を行う必要があります。
補正を実施した場合は、補正結果が実施地区の地殻変動等に適合したものであるかどうかの検証測量を実施するとともに、これにかかる工程管理及び検査を実施することとします。検証測量等の方法については、「地震による地殻変動後の座標補正実施要領」をご参照ください。
成果値の補正を実施した後、認証請求に係る手続きを実施することとします。なお、地震発生後に補正前の成果で仮認証を受けていた場合は、認証請求にあたって仮認証における検査成績表等の書類等を添付することとします。
④ 地籍調査は終了したが、登記所に地図及び簿冊を送付していない地域
当該地域の地籍調査成果については、地震発生前の成果を登記所へ送付することとなります(この取扱いについては、法務省と協議済み)。
⑤ 地籍調査が終了し、既に登記所に地図及び簿冊を送付した地域
当該地域の再調査(座標補正を含む)の方法については、「地震による地殻変動後の座標補正実施要領」によるものとします。